ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐

あまりに突然過ぎる、異世界訪問。

ここが地球だと理解はしたが、エルクは めまいがして、力なくベンチに座った。

横の青乃臣が、説明を続ける。

「さきほど、この星の地図を入手したと ころ、ここは《日本》という名であると 判明しました」

「にほ、ん……? 変わった名前だな。

っつーか、入手って。お前、日本の金、 持ってんの?

まさか、クロロプラストの貨幣が使える わけじゃねえだろ?」

「貨幣は使っていません。

地図でしたら、魔術でたぐりよせること ができましたので」

青乃臣は、目の前にある書店を指差す。

彼らのいる公園前には、個人経営の小さ な書店があった。

営業時間外なのか、シャッターはまだ閉 まっている。

「お前、それ、普通に盗みじゃね?

あーあ……。立派な執事だと思ってたの に、早くも盗賊なんかに成り下がった か……。

盗賊なんて、ファンタジーのおとぎ話に しか出てこないと思ってたぜ」

「心外ですね。盗賊呼ばわりなんて、傷 ついてしまいますよ」

「傷つくタイプじゃねぇだろ……」

エルクはあきれてため息をつく。

「……ふふふ。日本のお金を稼ぐことが 出来たら、私は必ず、あの店の主に地図 の代金を支払いますよ。

ご安心ください。

エルク様のお顔に泥を塗るようなこと、 私が喜んでするはずないでしょう?」

「こんなとこに居たんじゃ、エルク様も 泥も、ないと思うけど……」

それ以上ツッコむ気になれず、エルクは うなだれた。
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