初恋
木の下で待って居ると、少ししてから中野君が現れた。

「お待たせ知花。」

そう言って、はにかんだ 中野君は先程見た顔とは違い、優しく穏やかだった。
私はホッとした。

「知花…2人きりで話したかったから。突然呼び出して悪かったな…。」
中野君の言葉に私は首を横に振った。

「知花ありがとう…あのさあ…」

とりとめのない話をしながら私は中野君と楽しい時間を過ごした。

ほとんど、中野君が話しているのに相づちを打つ私だったが、それでも楽しかった。

自由時間が終わりに近づいた頃。
「なんかこのまま離れるの寂しくなるな。」
と中野君が言った。
私は黙っていた。
すると、中野君が急に近づいて来て私の手を握り黙り込んでしまった。
突然手を握られた私も、ドキドキして黙り込んだ。
すべての意識が手に集中していた。
中野君の手は暖かく力強かった。
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