初恋
その時私は眩暈に似た感覚におそわれた。
過去の記憶が、フラッシュバックした。

「桜ちゃん…!」

保育園の時に私は今みたいに手を握られた事がある。

「桜ちゃん好きだよ!」
将来、結婚しようと言ったのは、あの男の子…

名前は?

「名前は?」

「知花大丈夫か!?」

私の様子に驚いて、中野君が私の顔を覗き込んで いた。

私は、霞んだ記憶を打ち消すように声を出した。
「平気…ちょっと昔の記憶が最近たまに思い出してしまうみたいで…。」
「知花…昔の記憶ってどんな記憶?」

「保育園の時の記憶かな…?いつも同じ男の子の記憶が出て来るのだけど…。」

思い出すのは辛い。
何故だろう?!

「知花!
記憶が出てくるのだけど…って。
だけどなんなんだ?」

中野君に問いかけられて私は

「ゴメンなさい何でもないよ…。」

と答えるしかなかった。
どう説明したら良いかわからなかったからだ。

中野君もそれ以上は聞いてこなかった。

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