幕末パノラマ





自ら申し出て、自ら人を斬った



きっと、平成という時代ではあり得ないこと



幕末だから出来てしまう




恐ろしい事




「真夏さん?ボーっとしてどうかしましたか?」



桂さんが喋らない私に声をかける



「あ、いえ、なんでもないですよ?」



ニコッととっさに作り笑いを浮かべる




笑顔だけじゃない


今の私は全て偽りなのかもしれない



いや、偽りだったら良かったのにーーー



人を殺した私も、この時代に来た私も、こうやって喋る私も




一つだけ、一つだけ、本当があるとしたら



春を思う気持ちだけ




そうだったらどれだけ良かったか








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