アンチ☆ファミリアルラブ







「ちょ、痛いよっ!!痛いってば…!?」

「………」

意味が分からなかった。
なんで?
どうして?
「先生」なら、歩いてるのを見たからって追いかけて来ないよ…?
血は繋がらないけど、「兄」だから体裁を守るため?
それに…なんで、あんな変な顔すんの…?
なんであんな…

それか、あたしの見間違い?
隆尚さん変だよ。



でも、一番変なのはあたしだ。


こんな状況を嬉しく思ってる。

久しぶりにあたしに向けられた声や視線が嬉しかった。


腕を掴まれて、喜んでる…

掴まれた腕から、
また…
昔抑え込んだ幼い想いが拡がりそう。

熱に侵食される。
熱が伝わりそうでこわい


―――知られたくない。



「――もうっ!!離してよっ!?」


あたしは隆尚さんの手を振り払った。

誰もいない静かな路地に声が響いた。街灯に群がる虫が時折羽音をさせている。
震え出そうな想いと一緒に掴まれていた腕を押さえた。
それを見た隆尚さんが、慌てた。


「あ…、ご、ごめんっ!!つい力入っちゃって、痛かったよね?ごめん…」

「……お家…帰るんでしょう?もう、戻ったりしないから…」

隆尚さんを追い越し前を歩いた。
少し歩いて隆尚さんが後ろをゆっくりと歩き始める音がした。


二人の靴音がズレたリズムで路地を進む。





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