恋する指先
榛くんはあの後何も言わないで、ずっと手を繋いだまま一時間目の終了のチャイムが鳴るまで屋上で、ただ空を見上げて座っていた。
私は、そんな榛くんをただ、だまって見ていた。
榛くんにとっては隠しておきたい事だったのかも知れないけど、私にとっては小学校の時の記憶は忘れられないもの。
幼なじみって事も含めて。
榛くんてとっては違ったって事。
ただそれだけ―――――。
二時間目の始まる前に、私たちは教室に戻った。
一緒に戻るのは余計な噂を広めそうなので、私はあえて授業開始ギリギリに教室に入った。
それでも視線は集まって、結局、噂を広める結果となった。
幼なじみ、その事もあっという間に広がって、お昼休みには多分、全校生徒が知ってるんじゃないかって思う。
お弁当を食べに教室に来た綾が、机を寄せながら
「噂って凄いよね、一瞬で広がるんだもん」
と妙なところに感心しながらお弁当を広げる。
「お弁当、食べないの?」
目の前のお弁当を広げない私に、綾は不思議そうに聞いてくる。
食べる気なんてしない。
食べたくない。
「・・・ねえ、私と幼なじみって事、嫌な事?」
「は?」
綾は聞かれた意味が分からない、とおにぎりを頬張りながら首をかしげる。
榛くんはずるいよ。
自分の都合で話しかけてきて。
私の腕を掴んできて。
私なんていつも後姿ばかりなのに。
話しかけても冷たくするくせに。
急に優しくしたり、手を繋いだり。
変わらないのはあの冷たい指先だけ。
あの冷たい指先だけは今も昔も同じ・・・・・。
私は、そんな榛くんをただ、だまって見ていた。
榛くんにとっては隠しておきたい事だったのかも知れないけど、私にとっては小学校の時の記憶は忘れられないもの。
幼なじみって事も含めて。
榛くんてとっては違ったって事。
ただそれだけ―――――。
二時間目の始まる前に、私たちは教室に戻った。
一緒に戻るのは余計な噂を広めそうなので、私はあえて授業開始ギリギリに教室に入った。
それでも視線は集まって、結局、噂を広める結果となった。
幼なじみ、その事もあっという間に広がって、お昼休みには多分、全校生徒が知ってるんじゃないかって思う。
お弁当を食べに教室に来た綾が、机を寄せながら
「噂って凄いよね、一瞬で広がるんだもん」
と妙なところに感心しながらお弁当を広げる。
「お弁当、食べないの?」
目の前のお弁当を広げない私に、綾は不思議そうに聞いてくる。
食べる気なんてしない。
食べたくない。
「・・・ねえ、私と幼なじみって事、嫌な事?」
「は?」
綾は聞かれた意味が分からない、とおにぎりを頬張りながら首をかしげる。
榛くんはずるいよ。
自分の都合で話しかけてきて。
私の腕を掴んできて。
私なんていつも後姿ばかりなのに。
話しかけても冷たくするくせに。
急に優しくしたり、手を繋いだり。
変わらないのはあの冷たい指先だけ。
あの冷たい指先だけは今も昔も同じ・・・・・。