恋する指先
「でも、言葉にするって結構勇気がいるんだよね・・・。誰かの気持ちを動かそうって言うんだから、大変なのは当たり前なんだけどね」


 瞳を伏せる美織ちゃんは、私にではなく自分に言い聞かせてるみたいに聞こえた。


「美伊は誤解してるのかもしれないね。榛名君のこと。一緒に学校に行かなくなったのも、話しかけないのも理由があるのかもしれないし、幼なじみって知られたくないのにも訳があるのかもしれない。美伊が聞きたくてもずっと聞けなかったみたいに、榛名君にも言わない理由があるのかもしれない、ね?」


「うん・・・」


 半分納得しながら、半分は納得していない。


 理由・・・?


 榛くんが言わない理由・・・?


「美伊は榛名君のこと、どう思ってるの?」


「どうって?」


「好きなんじゃないかなって思って」


「え・・・?」


 美織ちゃんの言葉に、身動きが出来なくなってしまう。


 私が榛くんを・・・好き?


 私が?


 榛くんを?


 ボンッと一気に顔に血液が集中したみたいに熱くなる。


 好き?好き?好き?好き???????


 熱くなる頬を両手で包み込むようにしながら、美織ちゃんの方を見上げると満足そうに微笑む顔があった。


「やっと自覚した?」


 意地悪く目を細めてニヤリと笑う美織ちゃんは、小悪魔みたいに見える。



「自覚も何も・・・好きって・・・」


 そう言って、好きの定義が分からない私って・・・とちょとうな垂れる。



「榛名君のことばっかり考えてる時点で、好きなんだと思うな。気になるのも榛名君、目で追うのも榛名君、近づきたいのも榛名君、違う?」


 言われて違うと言えない事実に自分で自分に驚く。


 名前を呼ばれたいのも、触れたいのも・・・・・榛くんだ。




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