俺の幼馴染が鈍感過ぎる
知りたくも無い事を知ってしまった俺は、さっきよりもどんよりとした心を持って、教室に入った。
「里くんっ!真菜と、付き合ってくれるんだよね」
教室に入ってすぐに話しかけてきやがっ…じゃなくて、話しかけて来たのは、昨日俺がゆうにヤキモチをやかせたくてキスした、真菜。
「はぁ?何で、俺がお前と付き合う事になるんだよ」
昨日、確かにキスはしたが…告白はしてない。
「真菜に、あんな事して起きながら、付き合わないの?」
瞳をうるうるとさせて、上目遣いで聞いて来る。
上目遣いだからと言って、可愛いとは思わねぇ。
大体…
「あんなことって何だよ?」
俺がしたのはキスだけだ。
断じて、それ以上の事もそれ以外の事もしていない。
「真菜に言わすの?」
声が、震えている…何だろう。周りの女子の視線が痛い。
「美波⁉優明と別れてくれたんだ。ふーん。じゃあ、オレが告白しに行っても…何の問題も無いよね?」
今、ここにいるべきではない奴が俺に話しかけて来てる。
「何でこ「きゃー‼誰⁈あのイケメン!里もかなりかっこいいけど…あの隣の男子も超かっこいい‼」
おいおい…俺が燈に話しかけてるのに、被せてくんなよ。
「何でここにい「あっ、もしかして他学年⁉それなら、今まで見なかったのもまだ納得いくし‼」
…また、遮られたし。
「なん「何でもいいや‼超かっこいい‼名前、名前聞きたい‼」
何だろう…すごく苛ついてきた。
どうでもいいけど、女子は意外と声がでかい。
授業の発表の声はめっちゃ小せえのに、休み時間とかに出す声は、とにかくでかい奴が多い。
「…うっせぇんだよ‼黙れ!」
取り敢えず、一喝。
「で、何でお前ここにいんだよ?」
「聞いた…?今、暴言はいたよね。里」
「うん。もっと優しい人だと思ってたのに…」
「真菜も、がっかり」
…女子は声を潜めて俺の悪口(?)を言っている。
ついでに真菜のも混ざってる。
これなら、真菜の分で面倒な事は無いだろう。
「オレがここにいんのは…あれ?オレ言っといたよな。美波とおんなじ高校に転校したって」
そういえば、そんな事も聞いたような気がする。
「あぁ、なるほど」
けど、何故今?
「担任が、先に行って親睦深めろってさ。里と小田がこの学校に居るんですよーって言ったら、何かおんなじクラスに里と小田がいるから、大丈夫だろうっていわれてさ」
ふーん、と頷くと、反応の薄さに不満を持ったようだ。
「あれ?優明は?」
不満げな顔のまま教室を見渡した燈は、何かに気づいたようで顔をあげ、俺に聞いて来る。
そういえば、さっき教室を見た時も、ゆうの姿は視界に入らなかった。
「…いねーな…」
「あぁ、いない。…いや、彼氏なら場所ぐらい知ってるだろう⁈」
「知らん」
普段なら、場所の把握はしてあるが、今日は朝から一回もあっていない。
無茶を言われても困る。
「使えないなー」
いや、お前に使われるために存在しているわけじゃねーよ?
「ちょっと廊下見てくる」
俺らはドアの近くに立っていたので、そこまで移動する必要はなかったが、廊下と言うのはどこにでもあって、すぐそこの廊下ではなかったらしい。
燈は、教室を出て行って、パタパタと言う足音だけが廊下に響いた。