常初花
高級住宅街の、ど真ん中。


少しばかりお値段高めでも、質が良ければ需要がある。
後は、少しばかり店内の見目を良くしておけば。


そんなわけで、ギフトから自宅用まで案外とこの青果店は繁盛している。
ずっと親父が品質にこだわった商売をしてきた事がこの地のニーズに合っていたのだろう。


その親父が去年他界して、俺が跡を継いだ後もその信用は絶大で。
お得意様のおかげでこうして経営が成り立っている。



「あとは、あんたが良いお嫁さんもらってくれたらねぇ」



パソコンで売上入力している俺の横で、お袋がそろばんを弾きながら帳面をつけている。


そろばんて。
なんちゅう、アナログな。



「んなこと言ったって。ずっと店にいりゃ出会いなんて、あるわけねぇだろ。客はセレブばっかりなんだしよ」



セレブな奥様方が、娘を青果店の嫁に、なんて考える訳がねぇだろ。

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