常初花
林檎、好きなんだろうなー。


いい加減飽きねぇのかなー。


毎日来る客は、居ないこたぁないけど。
3ヶ月間ほぼ毎日通って、買うものといったら林檎オンリー。


而も必ず1個。


なんでだろ。



彼女が来店する時刻が近づくと、そんなことばっかり考えてた。
思えば、余計なお世話ってやつだが。



「なぁに、あんたあの客が来る時間になると、妙にそわそわし始めるわよね」



母親のにやけた面が気持ち悪い。
それこそ余計なお世話だ。


俺の中で、今唯一の刺激で、唯一興味が湧く対象なんだよ。
いいからほっとけ。


軽く睨みを聞かせたところで、彼女が来店するのが見えた。



「いらっしゃいませぇ」



うっかり声が裏返ったじゃねぇか、クソ婆ァ。

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