常初花
「あらぁ、あかねちゃんじゃないの」



いつものように林檎を選んで会計を済ませた時、入店した如何にもセレブな奥様が彼女に声をかけた。



「こんにちは」

「あかねちゃん、病院帰り?毎日大変ねぇ」



そんな会話が聞こえてきた。


ここらで病院って言ったら、少し山手に大きな総合病院がある。


入口の端で二つ三つ会話をして、彼女はすぐに帰っていった。


今日の会釈は、俺にではなくあのおばさまに向けてだった。



彼女は、いつも病院帰りなのだろうか。


誰かの見舞いか、毎日行くのなら熱心な話だ。


もしくは、彼女自身が病気か何かで、通院しているのだろうか。


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