常初花
いくらそんなことを考えたって、答えなんか解るわけがない。



「ちょっと、あんたさっきから入力進んでんの?」



うっさいな。
アナログ人間は黙ってそろばん弾いとけ。



いつもと変わりない毎日。


それでも、今日は彼女の名前を知った。


あかねさん。


こんなささやかなことで喜んでていい年齢でもないが。


知ったからって、名前で呼べるわけでもないし。


結局何も変わらない。




夏が過ぎて秋も深まるこの頃。


今日も彼女はやってきた。


今日は、珍しいな。王林だ。



「いつもありがとうございます」


どういうわけか、レジを打ちながら、極々自然にそんな言葉が出て自分でも驚いて顔を上げると。


いつも伏せられていて、合うことがなかった視線が今、俺に向けられていた。


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