常初花
1年目に買ったグラスから、順番に並び終えた彼女はテーブルの上に両腕と顎を重ねて乗せた。


僕も習って、同じように琉球ガラスの高さの目線。
ガラスを透して向こう側に見える彼女の顔は何かを懐かしんでいて。



休日のリビング、窓からの光をきらきら反射させる琉球ガラス。

色とりどりの光の中に、凝縮された10年が詰められている。



並んだグラスの、5年目と7年目に間があった。
そうか、割れたグラスの場所だろう。



「僕もさっき…初めて会った頃の、花を思い出してたよ」

「ふふ、10年経っちゃったね」



そう言えば、彼女は急に唇を尖らせる。



「年取ったとか、思わないでね」



30歳になって、彼女もやたら年齢を気にするようになったのは、気のせいではないと思う。


そりゃ、まぁね。
20歳の頃と比べると若さは無いかもしれないけど。


比べ方が、違うんだよそもそも。


「20歳の自分と、若さで競ったってしょうがないだろ」




< 4 / 36 >

この作品をシェア

pagetop