常初花
そうだ、酷く頭をぶつけたからだ。

思い出した。



どこでだっけ。



ああ、花の家に向かう途中の、交差点。

信号無視の、赤い車。

6回目の、沖縄旅行が目前だった。




ああ、そうか。

割れたんじゃなかった。

行けなかったから、買えなかったんだな。



「でも、その後もずっと、僕の代わりに買い続けてくれてたんだな」



思い出したら、嘘のように頭の痛みは消えた。

なんだか時々、噛み合わない会話の訳も。

全部わかれば、すっきりした。



「写真の中の、いつまでも変わらない洋ちゃんと。ずっと一緒に居たかったけど」

「うん、そうだね」



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