常初花
「…ちぇ」


ほら。

いつまでも変わらない、微笑むそれは今も初々しくて、まるで花のよう。

僕が一目惚れした、あの時のまま、今も僕をときめかせてくれるのに。



もう、僕のものじゃない。

だけど、きっとあいつなら幸せにしてくれるよ。

うん、結構、良いヤツだ。



「もしもし、柏木さん?」



さっきまで濡れていた君の瞳は、もう僕が拭うまでもなく乾いていて。

だったら、僕は諦めるしかないじゃないか。

泣かせるしか、一人にするしか、出来ない僕。



「長い間、縛り付けてごめんね。君との10年、幸せだったよ」



君にとっては、6年だったのだろうけど。



幸せになる君には必要ないものだから、想い出の品は全部僕が、もらって行ってあげる。



僕は、きらきら光る琉球ガラスを

ひとつひとつ手に取った。



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