とけていく…
「そこの二人、イラスト部に入んない?」

 突然のダイレクトな呼び掛けに、目をパチパチさせながら、彼らはお互いの顔を見合わせる。

「ほらほら、無視、しなーい」

 女は、間に割り込んで、男二人の肩をぽんっと叩いた。

「俺達、二年っすけど…」

 そう言って、振り返りながら勧誘してきた女の方を見る。

「あ、そうなの? あなた小さいから、一年生かと思っちゃった。ごめんね」

 女は涼を指をさして豪快に笑った。

(あれ? もしかして…)

 薄紅色の記憶が、彼の脳裏に浮かんでいた。あの時の、懐かしくて、切なくて、苦い思いを抱いたことは、もちろん忘れてなどいない。

「あれ、涼、このお姉さんとお知り合い?」

 女の顔に釘付けになって動かない彼を見た雄介が、彼と女の顔を交互に見る。

「あら」

 涼を思い出した彼女は、パッと顔が明るくなった。

「同じ学校だったんだね」

 笑いながら俺の肩をバシバシと叩く彼女のその笑みには、何か嫌な予感を思わせるような匂いを含んでいた。

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