とけていく…
「お父さん、帰国するの? よかったじゃん。」

 その日のお昼過ぎだ。ひと通り家のことを終えた涼は、紫に連絡した。彼らは、駅ビルに入っているファーストフード店で待ち合わせし、向かい合わずに座って昼食をとっていた。

「別に良かねぇよ。なんか再婚するらしくて。全く何考えてるんだか」

 残り少なくなったフライドポテトを口に運びながら、半ば呆れ気味で彼は言うと、それに驚いた紫は目を丸くする。

「再婚?! それは、びっくりだね。お父さん、いくつ?」

「五十八…かな?」

「やるね〜」

 意外そうな顔をして、紫はハンバーガーにかぶりついた。

「素敵じゃない。そんな歳でも恋愛できて」

「そうかぁ?」

 怪訝そうな顔をしている涼に対して紫は恍惚とした表情でうなずいた。

「時期が来たら、会ってあげなよね」

 彼女は、ウィンクしながらそう言った。

「ん…」

 彼は返事をしたものの、もちろん納得などしていなかった。彼のそんな顔を笑いながら、紫はドリンクを飲み一息ついていた。

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