とけていく…
 彼は駅から家までの間、歩道をダラダラと歩いていた。暑さと憂鬱さで身体と心はしおれていた。

(家に着いたら、ぜってぇアイス食お)

 手を内輪のようにして仰いでいると、対向から来た車がクラクションを鳴らした。

 フォン!

 その音の大きさと勢いにびっくりし、彼は思わずその車の方を見た。すると、車の運転手と目がバッチリと合ったのだ。眉をひそめてよく見ると、中からこちらに向かって激しく手を振っている初老の女性がいたのだ。

(ん? あれは…)

 涼は、「先生!」と口にしながら、道を渡ってハザードランプを灯している車の元に駆け寄った。

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