とけていく…
「どうしたんすか」

 涼がびっくりして聞き返すと真由美は、「今、コンクール用に練習曲をたくさん持ってきたから、届けようと思ってね! ほら!」と、助手席に乗せた紙袋を指差し、真由美はそう言ったのだ。

「いや、俺はまだ…」

「何言ってるの! 男がグズグズしてどうするのよ!」

 真由美は大声て涼に喝を入れる。そんな二人のやり取りを見ていた紫は、驚きが収まらない様子だった。

「え…、嘘ぉ…」

 紫は真由美を指差して、目を大きくさせていた。

「紫、知ってるの?」

「知ってるのって… 最近よくテレビに出てるじゃない」

 最近、全くテレビを見ていなかった涼は、「そうなんだ…」とつぶやく様にうなずいていた。

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