とけていく…
十一.
 今日もまた雨だった。まるで彼の心模様を映しているかのようなそんな雨だった。

 誰もいないと分かっていながらも、涼はリビングに人の影を探していた。彼にとって、昨日ほど寂しいと思った夜はなかった。胸の傷は治るどころか、痛みがどんどん広がってゆき、寂しさに最後のとどめを刺されたようなそんな気がしていた。

 そんな雨の中、彼が向かった先は、ドルチェだった。

 なんのためらいもなく、ドアを開けると、鈴の音とともに、「いらっしゃいませ」という元気な声をかけられた。元気な笑顔を浮かべながらそう言ったのは、真紀だった。しかし、客が涼だと解ると、その笑顔は驚きへと代わり、大きな目で彼を見ていた。

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