とけていく…
「なんで、『別れの曲』なんて弾いたの?」

 小さく笑っているのだが、彼女は、目を合わせなかった。

「まるで、永遠の別れ、みたいな…」

「違う。ドルチェでは、もう弾かないから」

「そっか」

 らしくない二人の会話はやはり続かず、またすぐに終わってしまった。また会話のない重苦しい空気が二人を包んでいた。

「俺さ…」
「あたしね…」

 不意に二人が同時に喋り出し、思わずお互いの顔を見合わせた。涼は視線をそらし真紀に譲ると、彼女は前を見据えながら話し始めた。

「あたしね、正樹と付き合うことにしたんだ」

 その発言に、涼の足は止まった。

「な…?」

 唐突すぎる報告に、彼は真紀の顔を覗き込んだ。

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