とけていく…
「好きだよ。あんな人だけど、あたしを好きだって言ってくれたから…」

 そう答えた瞬間だった。涼は、掴んでいた真紀の手首を力一杯引き寄せ、真
紀の唇を自分の唇で塞いだのだ。真紀の目は大きく揺れた。目を見開いたまま、身体から力が抜けていくのを感じていた。

 ほんの数秒—

 唇が離れると、真紀の顔が真っ赤に染まり、憎らしく涼を睨んでいた。その顔を見て、彼は不適に笑ったのだ。

「これで付き合えなくなっただろ。ざまぁ見ろ」

 彼は真紀の手を放すと、吐き捨てる様に言い放ち、彼女を残して走り去って行った。

(サイテーだな、俺は…)

 自嘲的に笑った。

 寂しくて、ただ会いたかった…

 素直に、そう言えたら良かったのに…

 ただ、カチンときただけなんだ。真紀が正樹となんかと付き合うなんて言い出すから…



< 128 / 213 >

この作品をシェア

pagetop