とけていく…
十二.
 涼は直ぐに部屋の鍵を開け、彼女を招き入れた。そしてすぐにエアコンのスイッチを入れて、ソファに出しっぱなしの服などを片付ける。そしてキッチンに入った。

 冷蔵庫から麦茶のポットを取り出し、ガラスのグラスに注ぐと、「すいません、コーヒーを切らしているもので…」と言いながらソファに座った彼女に出した。

「いいのよ。お構いなく」

 ニッコリと微笑む、目の前の女性。しかし、彼には今から何を言われるのかが気になり、正直落ち着いてはいられなかった。

「まずは自己紹介をさせてもらいますね。」

 涼の目を真っすぐに見つめ、彼女は切り出した。

「突然、お邪魔してごめんなさいね。私は小島笑子と申します。あなたのお父様には、アメリカではよくしていただいて… 」

 笑子と名乗る目の前の女性は、丁寧に頭を下げたのだ。

「…親父から再婚するって聞いてます」

 小さな声で涼が言うと、「そうですか…」と笑子はうなずいた。

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