とけていく…
「好きなの頼んでいいわよ!」

 景気よく真由美が声を張り上げているのだが…

「一番高くて、四八〇円のカツカレー…」

 壁に貼ってあるメニューを見て、涼は思わず声に出してしまった。

「涼くんは、カツカレーね。本田君は?」

 彼女のテンポにぽかんとしていると、「じゃ、僕もそれで。」と正樹が畳み掛ける。

「あたしはホットサンドにしようっと。あ、お願いしま〜す… カツカレー二つと…」

(ハハハ…、相変わらずだな、この流れ)

 突っ込む気もなくなり、涼は苦笑いをただ浮かべていただけだった。

 真由美がカウンターに向かって注文してる間、涼は広い食堂の中を珍しそうに見渡していた。

「大学の学食、初めて?」

 正樹が相変わらずの余裕たっぷりの様子で話しかけてくる。

「まぁ…」

 涼は相槌する程度に答える。

「普段も、それくらい素直だったら、ね」

 正樹はまた意地悪な笑顔でそう言ったのだった。涼は嫌味を言う彼を睨み、口をつぐんだ。
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