とけていく…
「先生は相変わらず、ハッキリ言いますね」

 正樹も楽しそうに同調する。

「でも、ナメてかかったら、痛い目に遭うわよ〜」

 真由美はクスりと笑いながら、涼の頭を撫で回してきた。そして、今度は涼の方に向き直って口を開く。

「涼くん。彼もあのコンクールに出るわ」

「そうですか」

 彼はさして驚きはしなかった。この流れを見て、気づかないほど馬鹿でもない。彼は密かにそう思っていた。

「二人には、私の推薦で出てもらうわ。涼くんは、ブランクもあるし、徹底的に練習しないと、本田君には勝てないわよ」

「はい」

 真由美と目も合わせずに、涼はひたすらカツカレーを食べながら、完結に返事した。

「涼くんには、可能な限り、私のところに通ってもらうから。あと…」
 再び正樹の方に視線を走らせ、真由美は付け加える。

「この子の実力が、今のピアノと思ってたら、負けるわよ。気を抜かないように」

「はい」

 正樹はにこっとしてから、真剣な眼差しでうなずいた。

「さ、食べよ、食べよ」

 言いたいことを言って“スッキリ”とした真由美は、心置きなくホットサンドにかぶりついていた。



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