とけていく…
(3 on 3か)

 ちょうど、コート内にいる雄介がパスをもらったところだった。素早いパスでボールは雄介の手に渡り、雄介についているディフェンスが果敢に攻める。それでも雄介は冷静な目で、相手のディフェンスにフェイクをかました瞬間、雄介の手から放れたボールはリングに吸い込まれていった。そこで、また黄色い声援がうるさいくらいに響き渡った。

(…あいつ、結構モテるんだよな)

 雄介は、バスケしてるときは、別人だった。

(普段は… 結構アホなのに)

 くだらないことを考えていると、笛が鳴り、交代となった。コート内にいた部員六人はすぐに外に出る。体育館の入り口辺りから、中を見ていた涼に、雄介は気が付いたようだ。

「何やってんの、そんなところで」

 タオルを首にかけ、水筒のストローをくわえたまま、雄介は涼の元に駆け寄ってきたのだ。

「体育館、さすがに暑ぃな。」

 涼は手を内輪のようにして仰ぎながら、不平を漏らす。

「俺への声援が、余計に熱くしてるのさ」

 タオルで汗を拭きながら、白い歯を見せて、雄介は笑った。

(……。)

 全く笑えない冗談に、涼の顔は凍りつく。

「無視するなよぉ。言ってて虚しいじゃねぇか」

 豪快に笑う雄介を見て、涼も苦笑いを浮かべていた。

「でもよぉ、ヤローの練習を見る趣味があるとはな。お前の視線、熱かったぜ。やっぱ俺に気が…」

「アホか」

 迫ってくる巨体をよけながら、涼は呆れたように笑った。

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