とけていく…
十五.
いろんな感情が涼の中で渦巻いていた。しかし、それをすべて胸の中にしまい、彼は鍵盤を叩き続けた。今日も、明日も、明後日も、貪るように…。今の彼にできることは、それしかなかった。時間など、もはや存在しない。いつ朝か、いつ夜か。そんなことはもう、関係なかった。
あんなに暑かった夏も終わり、虫の音が響き、涼しい風が頬をかすめるような季節に移ろいでいた。
涼が学校を休んでいる間、部活帰りの雄介がプリントを持って家を訪ねてくる。
「いつも、サンキューな」
「おう」
玄関先で、プリントを受け取ると、「飯でも食ってくか? 作りすぎちゃってよ」と涼は声をかけた。すると、途端に雄介は目を輝かせた。
「まじ? 助かるわ。今、母ちゃん旅行中でよ。姉ちゃん、飯作ってくれねぇんだよ…」
雄介はそう言いながら、ドカドカと家の中に上がり込んできた。
「たいしたもんじゃ、ねぇけどな」
涼はフライパンに残っているナポリタンを皿に移し、座って待っている雄介に出した。すると雄介は「うぉーっ」と変な歓声を上げながら、料理を頬張り始めたのだ。
「うめ〜」
「よかったねー…」
涼は渡されたプリントを目を通しながら適当に返事していた。
あんなに暑かった夏も終わり、虫の音が響き、涼しい風が頬をかすめるような季節に移ろいでいた。
涼が学校を休んでいる間、部活帰りの雄介がプリントを持って家を訪ねてくる。
「いつも、サンキューな」
「おう」
玄関先で、プリントを受け取ると、「飯でも食ってくか? 作りすぎちゃってよ」と涼は声をかけた。すると、途端に雄介は目を輝かせた。
「まじ? 助かるわ。今、母ちゃん旅行中でよ。姉ちゃん、飯作ってくれねぇんだよ…」
雄介はそう言いながら、ドカドカと家の中に上がり込んできた。
「たいしたもんじゃ、ねぇけどな」
涼はフライパンに残っているナポリタンを皿に移し、座って待っている雄介に出した。すると雄介は「うぉーっ」と変な歓声を上げながら、料理を頬張り始めたのだ。
「うめ〜」
「よかったねー…」
涼は渡されたプリントを目を通しながら適当に返事していた。