とけていく…
「先生も、忙しいでしょうけど、見舞いに行ってやってくださいね」

「わかったわ」

 真由美は、力強くうなずいた。

「ますます頑張らなくちゃね。お父様に、あなたの成長を見てもらわなければ」

 涼は、うなずいた。

「でも人のために弾くには、まず自分のために練習を繰り返すの」

 真由美の力強い言葉が、涼の胸を打つ。

「そうしたらね、自分のためにしてたことが、時には人のためになることもあるのよ。だから、頑張りましょ」

 先生は、ウィンクをしながら笑顔でそう言った。そして、カップを置き、彼女は両腕を天に伸ばして思いっきり伸びをする。

「後半戦、行くわよ〜」

 元気な真由美の声が、レッスンルーム中に響き渡っていた。

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