とけていく…
 面会時間いっぱいまで病室にいた涼は、切ない思いを抱えながら歩いていた。握られたてにそっと触れる。義郎の手は思いのほか大きく、暖かかった。その手は、いつまで俺を包んでくれるんだろう…?

 そんな風に考えていた。強がっていても、彼の目には悔し涙が滲んでいた。やり切れない思いが、彼の胸いっぱいに溢れていて、もはや抑えることなどできなかった。

 誰にぶつければいい?

 彼がそう思った時、履いていたカーゴパンツのポケットに手を突っ込んでいた。そして、そのポケットから携帯を取り出すと、彼は電話をかけていた。

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