とけていく…
「何考えてるの?」

 カウンターに頬杖をつき、ぼーっとしていると、真向かいに座った正樹が真紀に声を掛けた。

 土曜の午後。ランチタイムがひと段落付き、客がはけて店の中はガランとしていた。

「え? あぁ…」

 彼の声に気づき、ハッと我に返った真紀は、さっきまで誰もいなかった店の中を慌てて見渡した。

「二人だけだよ」

 無邪気に笑いながら、正樹はカウンター越しにいる真紀に顔を近づけた。間近に迫った正樹の目は、じっと真紀の目を捉えていた。彼の手が真紀の頬にそっと触れて、おもむろに目を閉じたその時、真紀の瞳は、拒絶するかのように揺れていた。そして、顔を背けたのだ。

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