とけていく…

　そこは、光に溢れていた。真っ白い光の中で涼は佇んでいた。誰かが彼の手を握っていることに気付いた。不意に、そちらの方に顔を傾ける。すると、彼の手を握っていたのは、見知らぬ幼い少女だった。彼女は、優しい微笑みを浮かべて彼の手を引いた。

　彼女の向かうままついて行くと、いつの間にか青空の下にいた。辺りには、色とりどりの花々が鮮やかに咲き乱れていた。その花園の向こうから、水のせせらぐ音が聞こえてきたのだ。そちらを見ると、水面が空を反射してキラキラとした美しい光をを放っていた。そのすぐそばにいた人影を捉えたのだ。目を凝らし、その人影を見ていたが、日の光が逆光となり、シルエットしか解らなかった。

　少女は、彼の手を離した。そして、必死な顔をして何かを訴えているのだ。しかし、言葉を話せない彼女の言いたいことが、彼には解らなかった。

　少女は、あの水面のそばの人影をゆびさした。彼がその指の先を見た時、しぶきが上がっていて、人影がなくなっていたのだ。パニックになった少女は、彼の手を再びとったが、彼は動けなかった。そんな彼を、少女は急かす。その時、耳元で言葉が聞こえてきたのだ。

「まだ、あっちに行ってはいけないのに！！」