とけていく…
 だんだんと懐かしさが蘇る。しかし、ここで感傷に浸っている場合ではないことは、涼もわかっていた。

「何言ってんの…」

 精一杯明るい声を出して、彼は言い返す。しかし、義郎の目は、本気だった。

「涼…」

「ん?」

「…私はやはり、お前の… 雄姿を見てやることが… できなさそうだな… 本当にすまない…」

 義郎の言葉はたどたどしかったが、冷静そのものだった。それが余計、彼の胸をえぐるのだ。

「…まだ元気じゃん。明日、きっと行けるよ」

 それでも、前向きに涼は笑った。

「…分かるんだ。不思議と…な…」

「なんだよ、それ…」

 穏やかな顔を見せる義郎は、『最期』を見据えているかのように彼の顔を見るのだ。目の前の息子の顔を…

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