とけていく…
 コンクールの翌々日に、彼は喪主となった。たった二人だけの、家族葬。それは、義郎の遺言だった。

 いよいよ義郎の入った棺桶が、静かに炎の中に入っていく。その様子をふたりとも、遠目で眺めていた。涼と笑子は静かに義郎を天の世界へと送り出したのだった。

 切ない思いだけを残して、父は逝ってしまった…

 義郎は白い骨と息子を遺して消えて無くなった。娘のそばへと旅立っていった。

 彼らは、終始、無言だった。



 一通り火葬が済み、涼はお骨を抱えて、笑子とともに外に出た。冷たい風が彼らの頬を掠め、薄曇りの空を仰いだ。

 つい先日の義郎の顔が、彼の頭を離れなかった。

『貫け、夢を…』

 きっと目が霞み、出ない声を必死に声にして搾り出した言葉だった。涼が忘れることは、決してないだろう。空を見上げながら、彼の頬に一筋の涙が流れた。そんな彼の肩を笑子が叩く。

「行きましょうか」

 彼女の言葉に、慌てて頬の涙を拭いた涼は、うなずいた。

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