とけていく…
 彼らは、待たせていたタクシーにふたりで乗り込んだ。

「このあと、何か予定あるの?」

 車が出て間もなく、笑子が口を開いた。

「いや、別に…」

「じゃ、どこかでご飯でも食べましょ?」

「…はい。」

 車の窓を流れる景色を見ながら、涼は返事をした。




「この間、弁護士さんが来て、こんなモノを置いていったのよ」

 タクシーを降りた二人は、適当に入った洋食屋のテーブルについていた。そして、注文を終えたそのテーブルで、笑子はそう切り出したのだ。

 彼女はカバンから折りたたまれた書類を取り出すと、テーブルに広げた。茶色いインクで印刷されたその書類をみるために、涼は身を乗り出し、目を通した。彼の目が驚きで見開いた。そしてその目を笑子に向ける。

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