とけていく…
 その後の猛勉強が功を奏して、涼は、なんとか三年生に進級することができた。真紀は大学に進学し、正樹は、ウィーンへ留学した。三者三様のこれからが始まろうとしていた。

 さわやかな風が吹き抜ける、眩しい季節の始まりだった。あの時のような…

「涼」

 場所は、学校の駐輪場。振り返らなくても、誰だかわかる。

「俺達、腐れ縁だなー」

 とても嬉しそうな大声が、嫌でも彼の耳に届く。

「また一緒なのか?」

 かばんを手に取り、涼は苦笑いを浮かべた。

「なぁ、今日遊ぼうぜっ」

「悪い、今日は墓参り」

 雄介の誘いを即答して断る涼に、彼は何か思い出したように顔をしかめた。

「去年も同じ理由で断られた気がする…」

 そう言って、雄介は頭を掻いていた。

「悪ぃな」

 謝ってはいるが、悪びれる様子もなく答える涼に、雄介は、相変わらずの白い歯を見せて笑った。彼らは、並んで歩き、教室に向かった。

 一年経ったら別々の道を歩むことになる。しかし彼らの繋がりは、決して消えない。涼は信じていた。

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