とけていく…
 そして今、彼は真紀と一緒にあの場所に立っていた。お互いの家の墓参りを済ませ、あの時のような柔らかな光を受けながら、この光景をふたりで見ていた。

「涼、あたしね…」

 ひらひらと舞う桜の花びらを見つめながら、真紀が口を開く。

「涼とここで出会った時から、きっと好きになってたんだ。だから涼には笑ってて欲しいって思ったの」

 彼は、繋いだ手をぎゅっと握った。

「ありがとう…」

 舞い上がる薄紅色の花びらを眺めながら、彼はつぶやくように口にした。

 十年、二十年……

 いや、もっともっと………

 この気持ちが続けばいいなと涼は素直にそう思っていた。



 言葉を越えて―

 天に届くかな、俺の気持ち…

 俺は、今、スゲー幸せです。

 だから二人とも、心配しないで……





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