とけていく…
 西日が射す午後三時過ぎ。歩いている生徒たちを簡単に追い抜き、軽快に走っていく。

「二人乗り、上手だね。」

 不意に真紀が言った。

「そう?」

 すると、真紀はうなずいた。

「ちっこい割には、力あるなぁって…」

「ちっこいは余計だろ。…つうか、雄介がデカすぎるんだよ。俺は百六十はあんの。」

「成長期に百六十は小さいって」

 大声で笑う真紀の声は、彼の耳にも届いていた。額にじんわりと汗をかきながらオレンジ色の光を走っていると、涼は昔、よく二人乗りしていたあの頃を思い出していた。あの頃も、こんな風に騒ぎながら西日の射すオレンジの光の中を、よろめきながら自転車で走っていたのだ。

「…懐かしいな」

 ぽつりとつぶやき、彼の顔には微かな笑顔が浮かぶ。

「え? 何か言った?」

「なんでもない」

 車道を走るバスに追い抜かれると、それを追い掛けるように、ペダルに込める力をいっそう入れて、彼は漕ぎつづけていた。

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