とけていく…
「ありゃ、ま…」

 改札を抜けようとした真紀は、改札の電光掲示板にでかでかと貼り出された紙を見つめていた。

「人身事故だって…。止まっちゃってるわ、電車♡」

 真紀は、こちらを見てニヤっと笑いながら涼に言った。

(うっ、嫌な予感…)

 明らかにまた理不尽な要求をされそうな気配を感じ、来た道を戻ろうと走り出そうとすると、真紀は首根っこを掴むように素早く彼の背中のシャツをつまんだ。すると、急に後ろに引っ張られ、バランスを崩した彼は自転車もろども倒れそうになる。

「あっぶねぇだろっ」

 なんとか倒れるのを必死で持ちこたえた彼は、彼女を睨みつけた。

「まぁまぁ、そんなに急がなくてもいいじゃん。どーせ、暇なんでしょ?」

 どんなに睨んでも、どんなに声を荒げても、真紀には通用しなかった。それどころか、笑って流されるだけだと、今頃になって気付いた彼は、諦めたようにつぶやいた。

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