とけていく…
「え… 何?」

 集中砲火を受けた青年は、たじろいでいた。

「あ、来た」

 真紀が意外そうな顔をしてつぶやいた。

「だって、来いって言ったでしょ」

 苦笑いを浮かべながら、彼は言った。見たところ、二十くらいだろうか。

「あれ、見慣れない彼は?」

 涼の存在に気付き、その青年彼に指を差した。

「あたしの弟」

 真紀が自慢げにそう話すと、青年は笑いながら彼は涼の隣りに腰を下ろした。涼は、また嫌な予感がしていた。

(笑い方が、真紀と同じだ…)

 関わると、とことんひとをコケにして楽しむタイプであると、涼は直感した。

「俺は真紀の従兄弟の正樹ね。音大生。ピアノ専攻。」

 正樹と名乗る青年は、爽やかに涼に握手を求めてきた。戸惑う涼は、控えめに手を出した。すると、正樹に力一杯に握り締められ、涼は顔をしかめた。

「そんなに警戒するからだよ」

 正樹は口角をぐっと上げて、意地悪く笑っていた。

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