とけていく…
 もうすぐで、暦上は夏を迎えることになる。爽やかな陽気も、体を動かすとすぐに汗をかき、夏を感じることができる。

 やがて喉の渇きを感じ、近くのコンビニに入ろうとすると、背後からゆっくりとしたエンジン音が聞こえてきた。振り返ると、バスが今しがた涼を追い越していったところだった。

「えっ?」

(二十分は待たないと来ないはずだったのに)

 まだ歩き出して十分程しか経っていなかった。彼は遠ざかって行くバスの系統番号を確認すると、乗ろうとしていたバスではなかったようだ。

(遅れてたのかよ…)

 今日はツイてない、と言わんばかりにため息をついた涼は、ヤル気なさ気にコンビニでサイダーを買い、再び駅に向かって歩き出した。

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