とけていく…
『そーいやお前、この間の土曜日、紫に会ったんだろ?』

「あぁ」

 偶然紫と出会い、遊園地に行った時のことが彼の脳裏をかすめた。

『あれね、俺が言ったの。多分、涼は暇だって。紫からずーっと相談されたからな〜』

「そうだったのか…」

 涼は、心から納得していた。確かに腑に落ちない部分が彼の頭の中で引っかかっていた。偶然にしては出来すぎていたからだ。

 涼はバイトのことを含め、さっきの出来事を雄介に話していた。

『マジか! それはあいつも焦ったなぁ。こりゃ、責任取るしかないよ、涼』

 笑いながら雄介は言うと、涼は途端に苦笑いを浮かべた。

「冗談言うなよ。俺は別に彼女とか興味ない。…紫には悪いけど」

『なら、ハッキリ言ってやれば。まぁ、俺は真紀先輩より、紫の方が健康的だ
と思うけど?』

「なんでここで真紀が出て来るんだよっ!」

 涼は、つい声を荒げていた。体温が急激に上がっていく。額には、軽く汗をかいていた。

『結局、真紀先輩のペースに乗せられてるってことは、気があるからだろ? お前マゾだから、文句言ってても、本当は結構心地いい〜、みたいな』

「んなことあるか」

 そう答えつつも、彼の心の奥は、にわかに揺れていた。

『あるよ。真紀先輩は、やっぱ由里さんに似てるから、お前は絶対気になって
るはずだ』

 いつの間にか、雄介の声は真剣味を帯びていた。

「そんなこと…」

 頭の中に、笑う由理の顔が浮かぶ。いや、由里か? 真紀か? 言葉に詰まる涼は、首を激しく振った。

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