とけていく…
「あれ、お前が遅刻なんて珍しいな」

 ジャージ姿の雄介が、朝のホームルームの後、涼に声を掛けてきた。まだ朝練の時にかいた汗が引いておらず、彼は少し汗臭かった。

「ちょっとね…」

 今朝のことを思い出し、言葉少なに答えると、涼は席を立った。

「あれ? どこ行くん?」

「便所」

 雄介に背を向けたまま掌をヒラヒラさせながら、涼は教室から廊下に出た。

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