とけていく…
放課後、教室内の人影が少なくなっていた頃、涼が帰ろうとすると踵を返した時、部活に向かおうとした雄介と正面衝突した。その衝撃で、涼が持っていたキャンパス地のトートバッグが床に落ち、中身が飛び出ていた。
「痛って… って悪ぃ、何も見てなかったわ」
雄介の胸に思いっきり鼻をぶつけた涼は、鼻をさすった。
「あはは。悪ぃ、大丈夫?」
雄介はいたって普通に振舞っていた。ダメージを受けたのは、涼だけのようだ。彼は苦笑いを浮かべていた。
「ん…」
涼が屈んで広がってしまった楽譜を拾い上げていると、すーっと雄介の目が細くなった。
「バイトの?」
「そ。」
近くの机で楽譜を揃え、バッグにしまう。涼は「じゃな」と手を挙げ、雄介を通り越そうと踏み出した。
「あ、待てよ、涼」
雄介に呼び止められ、涼は足を止めて少しだけ振り返った。
「来週から、インターハイの予選が始まるんよ。紫と見に来いや」
「予選? なんで」
「どうせあいつにフォローなんてしてないんだろ。お前から誘ってやれば」
それだけ言うと、雄介はやたら大きなドラムバッグを肩にかけ、飄々と教室
から出て行った。涼はそんな雄介の背中を眺めながら顔をしかめた。そしてそのままの顔で下駄箱に向かった。
「痛って… って悪ぃ、何も見てなかったわ」
雄介の胸に思いっきり鼻をぶつけた涼は、鼻をさすった。
「あはは。悪ぃ、大丈夫?」
雄介はいたって普通に振舞っていた。ダメージを受けたのは、涼だけのようだ。彼は苦笑いを浮かべていた。
「ん…」
涼が屈んで広がってしまった楽譜を拾い上げていると、すーっと雄介の目が細くなった。
「バイトの?」
「そ。」
近くの机で楽譜を揃え、バッグにしまう。涼は「じゃな」と手を挙げ、雄介を通り越そうと踏み出した。
「あ、待てよ、涼」
雄介に呼び止められ、涼は足を止めて少しだけ振り返った。
「来週から、インターハイの予選が始まるんよ。紫と見に来いや」
「予選? なんで」
「どうせあいつにフォローなんてしてないんだろ。お前から誘ってやれば」
それだけ言うと、雄介はやたら大きなドラムバッグを肩にかけ、飄々と教室
から出て行った。涼はそんな雄介の背中を眺めながら顔をしかめた。そしてそのままの顔で下駄箱に向かった。