とけていく…

「女の子の方は、"友達"って感じじゃなかったけど…」

　思い返しながら真紀は言う。彼が思わず眉根を寄せると、「図星なんだ」と、嬉しそうに彼女は言った。

「涼くん、ついにシスコンから卒業ですか」

　意地悪く微笑む真紀は、紅茶のティバッグをカップに放り込み、ポットのお湯を注いだ。

「俺がシスコン卒業したら、お前はお役御免だな」

　涼はニヤリと笑いながら言い返す。すると、真紀は「弟の成長する姿を見れて、しあわせだよ〜」と、全く動じていない様子だった。そんな彼女を見て、涼は舌打ちした。

「早く着替えたら？ あたしは自分の部屋に行ってるね〜」

　熱い紅茶の入ったマグカップを手にそのまま涼を追い越し、リビングから出て行くと、彼女は空いている手でヒラヒラと手を振りながら、左手の階段に上がって行ってしまった。誰もいなくなったリビングで一人ポツンとしていると、彼は思い出したように着替えを始めたのだった。