とけていく…
「…そんなに逢いたいなら、メールすればいいのに」

 正樹が笑いながら言った。

「何言ってるの?」

 真紀は正樹に背を向けたまま、その言葉の意味を彼に尋ねた。

「真紀は、あの坊主のこと、好きなんだろ?」

 余裕の笑顔を向けながら、正樹は言った。真紀は一瞬手を止めたが、無視して食パンに具を乗せていた。

「…あいつは、最低なんだよ」

 そう言いながら、真紀は具を乗せた食パンをトースターに入れてタイマーのスイッチを入れた。そしてアイスコーヒーを作り始める。

「ふーん…」

 頬杖をついた正樹は真紀の動きを目だけで追った。

 たくさんの氷が入ったグラスに、濃いめに作ったコーヒーが注がれる。カランと甲高い氷の音が、二人だけの空間に響いた。真紀はそっと正樹の目の前にそのアイスコーヒーを出すと、再び背を向け、トースターの中を覗き込んでいた。

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