とけていく…
「涼、こっち!」

 少し遅れて駅に着くと、すでに紫は待ち合わせの場所に到着していた。手を振り、彼を呼び寄せる。涼は、彼女の元に向かった。

「遅いよ、座れるかな?」

 文句を言いながらも、涼に会えた喜びを全開にしながら紫は彼を待っていた。

「悪ぃ、寝坊しちゃってさ」

 笑いながら彼は謝ったのだが、その笑顔は作り笑いだったのを紫が見逃すはずはなく、彼女の顔は、次第に曇っていった。

「どうしたの? なんかすごく酷い顔…」

「酷い顔ってのは、ひでーなぁ。元々、こんな顔だよ」

 明るい口調で話す涼に、紫はあからさまに困惑していた。

「いやいやいや、そう意味じゃなくて」

 彼女が真相を聞き出そうと、彼の顔を覗き込んだ。しかし、涼は「行こう」とだけ言って、改札に向かって歩き出したのだ。紫は、首をかしげながら、彼の後に続いた。

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