ロスト・プリンセス
柚稀side
高「お嬢様、準備は整いましたでしょうか?」
夕食の後、突然もう一人の執事の高宮に出掛ける準備をするように言われた。
ゆ「出来たけど何処へいくの?」
高「今はお伝え出来ません。」さっきからこの調子で教えてくれない。
ゆ「まさかあの変態御曹司の所じゃないでしょうね?」
高「それは縁談の時の方の事でございますか?」ゆ「それ以外誰がいるのよ」
高「あの方の所ではございません。出発しましょう」
真っ暗な夜空の下、私は高宮に連れられて屋敷を出た。
屋敷を出るのは涼介の元を去ってから初めてだ。お父様が私を出さないように制限していたから。そして今も指令は続いているはず。でもそうだとしたら今こうして外に出れているのは誰の指示?高宮は私に嘘はつけないなぜか知らないなけど高宮の嘘はすぐ見破れる。だから変態御曹司の所は 100%ない。
じゃあ誰がこの夜の中を外に?いくら考えても答えが見つからない。どこへ連れられても良いように心の準備はぐらいはしておこう。
高「到着いたしました」そこに視線を向けた
ゆ「っ!…」
こなんなにもまた訪れることを望んだ場所はない戻りたくて戻りたくて辛かった…でも…
ゆ「高宮!何を考えているの!?」
高「私の考えではありません。」
ゆ「じゃあ誰が…!?」
高「奥様でございます」お母さんが…
“今だけはお母さんを信じて待ってて”
あの言葉はこの事だったんだ…
高「私達がお嬢様をかくまえるのは1時間だけです」
ゆ「……」
高「彼はちゃんと中に居ますよ」
ゆ「…ありがとう高宮」高「私は何もしていません…さぁ、時間を無駄にしないよう早くっ!」
私は意を決して車を降りた。
ゆ「…すぅっ…」小さく深呼吸をする。
ゆ「…よしっ!」
…ピンポーン
インターホンを押すとゆっくりと扉が開かれた。ゆ「……」
扉の内側から出てきた姿を見た途端涙が溢れてきた
ゆ「…涼介っ…」
時間を無駄にしないためにも泣かないって決めてたのに…。
り「…柚稀…?」
そうだよ柚稀だよ。ずっと会いたかっただよ
あなたの事ばかり考えてたんだよ。伝えたい事聞きだい事があるのに
何故だか言葉が出てこない溢れてくるのは想いと涙ばかり…
ギュッ…
り「会いたかった…」
私を抱きしめながら囁く涼介の声
時がこのまま永遠に止まってしまえばいいのに…心の底からそう願った。
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