ロスト・プリンセス
柚稀side
時がきた。
涼介にすべてを話さないといけない時が。
ゆ「…私は斎藤財閥の一人娘で本名が斎藤柚稀」り「うん」
ゆ「10歳の時に海外に行かされて14歳の誕生日を迎える直前までずっと海外暮らしだった。でも… 14歳の誕生日に屋敷を抜け出したの。
り「なんで?」
ゆ「権力の恐ろしさを知ったから」
り「…」
ゆ「もともとお嬢様とかお金持ちって言うのも嫌だったけど、14歳の誕生日の前日に…私のせいである家族が生活を奪われたの。」
あの日のことは…今でも鮮明に覚えてる。
ゆ「私の何気ない一言…たった一言で、同級生だった子一家の生活を奪ったの。きっかけなんてそんな大きいものじゃなかった。ただ喧嘩をしただけ。でも、私が思わずその子の愚痴を言った。
それだけで、お父様が力を使って…もう普通には暮らせない程の圧力をかけた。」
り「…でもそれは柚樹のせいじゃ…」
ゆ「責任の所在なんかはいいの。その時私は権力の恐ろしさを身をもって体験した。もう…あの家では暮らせない。そう思ったの。」
り「…」
ゆ「お父様は笑っていたわ。まるで相手を見下すかのように。私は理解できなかった。理解したいとも思わない。とにかく怖くなった私はお母さんのお姉さん…千秋叔母さんに相談したの。叔母さんは私が両親よりも信頼できる唯一の人だったから。」
り「…それで?」
ゆ「私が斎藤家から逃げるのに協力してくれた。小さい頃から私の事を実の娘のように可愛いがってくれていたから、涙を流して私に協力してくれた。日本で二人で戻った後もずっと私と一緒に暮らしてくれてたわ。」
り「…」
ゆ「…でもね、亡くなっちゃったの。」
り「え…?」
ゆ「去年の今頃かな。もうちょい先か。交通事故で。叔母さんが亡くなった情報はすぐに斎藤家に伝わって、私らが暮らしていた家も全部張り込こまれちゃって…必死に逃げてる時に、涼介…あなたと出会ったの。」
り「……」
ゆ「…これがロスト・プリンセスなんて名がついた私の真実。」
全てを話したところで何かが変わるなんて思ってない。
でも…不思議と胸の中がかるくなった。
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