ロスト・プリンセス
涼介side
仕事の休憩中。
仲間達と楽屋にあるテレビを見ながら弁当を食べていた。
TV「速報です。たった今ロスト・プリンセスとして有名な斎藤家の婚約パーティー会場との中継が繋がりました。」
り・せ「え…」
…柚樹…。
ゆ『本日はお集まりいただきありがとうございます。婚約相手の石川様ご一家とは父の紹介で出会いました。私は…』
そこまで言うと、言葉をつまらせた柚樹。
少し考えるような様子を見せ、こう言った。
ゆ『…この婚約をお受けするつもりはありません。』
テレビの向こう側がざわついた。
いや、ざわついたのは会場だけじゃない。
俺らがいる楽屋の中の空気まで一瞬にせ変わった。
ゆ『この婚約は…私の父が私の意志とは関係なしに結んだものです。斎藤家の今後の更なる発展と利益のために。』
父『っ!柚樹やめなさい!』
ゆ『でも…私には好きな人がいます。』
またしても会場が騒がしくなった。
ゆ『…私は…財閥の令嬢として産まれ、英才教育を受けないがら育ちました。世の中の大半の方々から見たら、とても贅沢な人生だったかもしれません。でも、こんな私にも皆さんと同じように恋する気持ちを持っています。』
誰もが…自分の気持ちを精一杯話そうする柚樹に釘付けだった。
ゆ『これはお金や権力で手に入れられるものではありません。私は…私も…皆さんと同じように自分が大切にしたいと思える人、共に人生を歩みたいと思える人と一緒になりたい。お金とか、権力でそんなの関係なしに。だから…この婚約をお受けするつもりはできません。…迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。』
友1「…この会場すぐそこのホテルじゃん。」
テレビの中で頭を下げる柚樹の姿を見て、友達が呟いた。
せ「…涼介行ってきな」り「え?…でも…」
せ「こんな事で壊れる仲じゃないでしょ?」
り「…ありがとうっ!!」俺は楽屋を飛び出した。
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