202号室の、お兄さん☆【完】

「何故、僕の為?」

お兄さんが猜疑心の強い眼差しでトールさんを見るが、トールさんはあっけらかんとした顔で言う。


「あぁ。鳴海は接触禁止になってる人間なんだけどね。フラッシュバックの原因をあいつが知ってるみたいだから、みかどちゃんが誘惑して聞き出すんだってさ」

「な、何でみかどちゃんがそんな事を? 僕は、別に平気なんですよ?」
お兄さんがオロオロし始めると、苛めるのを満足したトールさんが猫たちとテラス席に消えてしまった……。


「あの、僕……本当にこのままで良いし、今の生活に不便なんて無いから、危険な事、しないで下さいね?」

「だったら、私、201号室から出て行かなければいけなくなるんです」

「え?」

「お兄さんの隣の部屋なのに、お兄さんがフラッシュバックを起こしてしまう、ワードや出来事を知らなければ、もし『それ』を言ってしまったら……? もし思い出させてしまったら……?

私は、もう花忘荘には居られなくなるんですよ」


だから、
お兄さんを傷つけても、
お兄さんの隣に居たいから、
彼と対決するんです。



「大丈夫、です。皇汰たちとしっかり相談しているんですから」

安心して貰おうと明るく笑うが、お兄さんの顔は晴れない。
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